米国非農業部門雇用者数報告は、米国の最も重要な経済発表の一つです。この発表の日は重要な取引機会になることがあります。この報告は通常、毎月第一金曜日のニューヨーク時間午前8:30に発表されます。
このレポートでは、米国の製造業・建設業・商品産業で働いている人数が報告されます。これらの職業は米国の労働人口の80%を占めるので、このデータは非常に重要です。
このNFP報告には、農業従事者・政府部門での被雇用者・個人家庭の従業員・非営利組織で働いている人は含まれません。
米国非農業部門雇用者数報告は、毎月発表されるニュースの中で最も重要なものの一つです。NFPが重要なのは、これが高いボラティリティを生むきっかけになるからです。変動の大きい市場では取引の機会が多く、大きな利益を上げることが出来ます。同時にこの変動はリスクを増加させるため、大きな損失を生む可能性もあります。
雇用データにより、経済の健康状態について多くの情報がわかります。特に、その数字が予測された数字よりも非常に高かったり低かったりした場合には、金融市場とFX通貨市場に対して大きく突発的な影響を与えます。このような通貨価値の極端な変化は取引をするよい機会です。しかし前に述べたように、変動の大きさはリスクも増大させます。
EUR/USD、GBP/USD、AUD/USD や USD/JPY 等の主要通貨ペアは、NFPニュース発表時に好んで取引されます。主要通貨ペアはトレーダーが米国経済の状態に基づき米ドルを取引すると、しばしば大きく変動します。
投資家は予想される将来の成長に基づいて株式の売買を行うため、主要な株価指数は変動しがちになります。
米ドルに紐づいた商品も価格が変動し、取引機会を作り出します。金はそのいい例です。金は投資家にとって、米ドルが下落する見込みがあるときの避難場所と考えられています。そのため、雇用者数と投資家がどれほど経済に自信を持っているかによって、金価格も非常に大きく変動します。
既にお気付きの通り、NFP発表に関連する取引機会はFX市場に限定されません。経験豊かなトレーダーは調査を行い、最適な取引機会を探しながらも、常に警戒しています。
変動は利益を生む機会を作り出しますが、同じように容易に損失にもつながります。そのため、NFPの際に取引を行うときは、常にリスク管理のためのストップロスの使用を検討してください。スキャルパーでない限りは、市場が少し落ち着くまでポジションを取るのを待った方がいいことさえあります。
またEUR/JPY、EUR/AUD、GBP/JPY等のクロス通貨ペアは避けることをお勧めします。クロス通貨ペアはしばしば非常に大きな変動(急速な戻り)を生み出し、主要通貨ペアに比べて予測がしにくいためです。
多くのプロトレーダーはNFPニュース報告期間に取引しないことにしています。なぜならば変動の増加によるリスクがあるからです。影響の大きいニュースの発表の期間でも問題なく市場に参加できる場合は、自分に有利になるいくつかのコツがあります。
心に留めておくべき最も重要なことは、最も大きな価格の一方的な動きは、常に2つのうちの1つの結果として起きるということです。それは、NFPの数値が市場の期待を下回るか、NFPの数値が市場の期待を大幅に超えるかのどちらかです。
NFPの数値が市場の期待を下回った場合、これは米ドルの価値にネガティブな影響をもたらし、USDペアを売るチャンスをもたらします。逆に、数値が予想を上回った場合、買いポジションを持つ良い機会をもたらします。
2016年6月3日の米国非農業部門雇用者数報告の数値を例に挙げてみましょう。この時、数値は予想を大きく下回りました。一般的なコンセンサスは、5月に15.9万人の新規雇用が新たに創出されたであろうというものでした。しかし数値は非常に低く、前月に新たに創出された新規雇用の数は、3.8万人だけでした。市場は米ドルを大きく売り、EUR/USD等のドルクロスを大きく上昇させました。(図表1参照
この場面で取引を行う場合、少しのスリッページは我慢する必要があります。このような状況において市場が大きく動く場合には、市場の特性からして、この点は克服することが出来ません。どのような状況でも、みなが常に最初に起きた反応の方向に取引したいと思うので、この流れを逆転させること(逆方向の取引)は出来ません。
これが今のところ、トレーダーが遭遇するであろう最良でかつ最も利益の出るNFPのパターンです。
NFPを基に取引する二番目によいパターンは、雇用者数の数値に大きな変化がなかった時です。この場合には、最初の動きを打ち消す動きにでることが常にベストです。なぜなら、最初の動きはおそらく実際の動きが始まる前のストップ狩りだからです。
非農業部門雇用者数についての2016年5月6日の例を見て見ましょう。この時、NFPの数値は市場の期待を下回り、前回の20.3万人から16.0万人に新規雇用者数が減少しました。
図表2で、最初の動きが予測通りなのが見て取れます。NFP数値が悪いと、ドルの価値が下がり、EUR/USDが上がります。しかし、数値だけが問題なのではありません。NFPの数値の背景を理解して、それをテクニカルのグラフに付け加えるのがベストです。
このケースでは、EUR/USDでは下降トレンドが支配的でした。予想通り、最初の動きは騙しで、結局は大きな揺り戻しがありました。
これらは確定したルールではなく、ただのガイドにすぎません。経験を積むにつれ、NFP発表時の価格変動の分析に習熟してくるでしょう。
NFP報告中の取引は、高いボラティリティのために高いリスクがあることを忘れないでください。そのため、このような環境でポジションサイズを調整するのが賢明です。
非農業部門雇用者数 (NFP) 報告は、米国労働統計局で入手できます。